【目的】大豆は微生物による発酵や熟成の過程を経て,消化吸収率も高くなり,旨味増加や食感変化等が起こる。このような大豆の発酵食品は照葉樹林帯の中心である中国をはじめ,東南アジアや日本で食されている。中国の大豆発酵食品「豆豉」は,日本の寺納豆や浜納豆の起源とされ,塩味が強く,調味料として利用されている。本研究では,豆豉のタンパク質量,遊離アミノ酸量,遊離アミノ酸組成,SDS電気泳動,抗原抗体反応を行い,食品中の微生物によるタンパク質の分解とアレルゲン分解について検討することを目的とした。
【方法】実験に用いた豆豉は,2005年8月中国・雲南省・西双版納にて収集した5試料である。比較試料として日本の浜納豆,寺納豆を用いた。各試料を凍結乾燥させ粉砕後,10倍量の30mMトリス塩酸緩衝液を加え,4℃で一晩撹拌し可溶性タンパク質を抽出した。遠心分離後,上清液を分子量3,000(YM-3)で分けた。高分子部分をタンパク質定量,SDS電気泳動,抗原抗体反応に,低分子部分を遊離アミノ酸定量,遊離アミノ酸組成分析に用いた。
【結果】(1)豆豉を生大豆と比較すると,タンパク質量は少なく,遊離アミノ酸量は多かった。大豆タンパク質が微生物発酵作用を受け,低分子化されることが明らかとなった。またアミノ酸組成では,いずれの試料ともグルタミン酸(Glu),ロイシン(Leu)が多く認められ,豆豉のなかにはGlu量が全アミノ酸量の約3割を占めるものがあった。(2)SDS電気泳動の結果,生大豆と比較して豆豉はタンパク質分解が進んでいたが,そのバンドには差があった。(3)抗原抗体反応の結果,豆豉はアレルギー反応部分が低減化させており,なかには大豆アレルギーの主要タンパク質とされる部分にバンドがみられなかった。