<目的>動脈硬化発症には血管内皮細胞における過剰なアポトーシスが関与している。セラミドはアポトーシスを有する生理活性脂質であり、以前我々はヒトの血漿セラミドが動脈硬化危険因子と相関関係にあることを報告している。中でも血漿コレステロールとは最も高い正の相関がみられた。そこで本研究では動脈硬化モデル動物であるアポE欠損マウスにコレステロールを与え、セラミド代謝及びLDLの酸化物に及ぼす影響を検討した。
<方法>アポE欠損マウス及び野生型マウスに、コントロール食(AIN76)もしくは1%コレステロール添加食を与え8週間飼育した。各組織のセラミドはLC-MS/MSにて測定し、LDLのタンパク質であるapoBの酸化産物はWestern blotにて測定した。
<結果>コレステロール負荷により、アポE欠損マウスで血漿コレステロールが増加した。血漿セラミドはアポE欠損マウスで野生型マウスの5倍高く、アポE欠損マウスでのみコレステロール負荷により数種類のセラミドが増加した。肝臓のセラミドもアポE欠損マウスで高かったが、血漿ほどではなかった。脂肪組織のセラミドは両マウスで違いはみられなかった。また肝臓と脂肪組織は両マウスともコレステロールによるセラミド増加は確認できなかった。更にapoBの酸化物はアポE欠損マウスでのみコレステロール負荷により増加していた。以上より、アポE欠損マウスにおけるコレステロールの蓄積は血漿セラミド及びLDLの酸化物を増加させることが分かった。コレステロールはセラミドに比べると毒性は低いことから、セラミドが新たな動脈硬化危険因子であることが示唆された。この研究は高島夕佳、足達乃理子、中原佳代子、上川千明(奈良女大)、斯波真理子(国立循環器病センター)との共同研究である