目的
野菜や果実の煮熟軟化にはペクチンの挙動が大きく影響する。本研究ではユズを用いて、クエン酸浸漬、高圧力処理、加熱処理によるペクチンの溶出と、果皮の軟化の関係について検討した。
方法
ユズの外果皮、中果皮、内果皮、果肉の各部位ごとの重量、水分含量、pHを測定した。ユズの外果皮を3 mm幅に切り、pH 2.0、2.5、2.7のクエン酸浸漬、500 MPa 30分高圧力処理、100℃10分加熱処理を行った。処理後の外果皮の硬さをクリープメータで破断強度解析し、組織構造をクライオ走査電子顕微鏡で観察した。生および処理後の各部位よりペクチン質を分別抽出し、ガラクツロン酸量を定量した。また、ペクチン以外の食物繊維量も定量した。
結果
ユズ外果皮をpH 2.0、2.5、2.7のクエン酸溶液に浸漬すると、pH 2.0が最も軟化しやすく、浸漬後30分である程度軟化したが、pH 2.5、2.7では1~2時間後に軟化が始まった。また、浸漬時間が長く、pHが低いほど軟化が促進した。加熱処理やクエン酸浸漬によって細胞壁に緩みが生じ、軟化したが、高圧力処理では軟化はわずかで、細胞壁の緩みも少なかった。ペクチン量は中果皮>外果皮>内果皮>果肉の順に多く、どの部位も高メトキシルペクチンの割合が多かった。外果皮をpH 2.0に24時間浸すと、約30 %、pH 2.7では24%のペクチンが溶出した。加熱すると、いずれの部位も生、高圧力処理したものより低分子の水可溶性ペクチンの割合が増加した。果皮のpHが約3~4、ゆで汁のpHが4.02であったので、β-脱離ではなく、加水分解により低分子化したものと思われる。