【目的】平均粒径が小さな微細O/Wエマルションは、クリーミングしにくく安定であるなど、有用な性質を有している。その調製には高圧ホモジナイザーなどを用いる物理的乳化法と、乳化剤/油/水の状態変化を利用する省エネな化学的乳化法がある。我々は、食品用乳化剤を用いた省エネな化学的乳化法により微細なエマルションの調製を試みている。今回は、ポリグリセリン脂肪酸エステル系における乳化と状態図の関係について報告する。 【方法】ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてデカグリセリンモノカプリル酸エステル(MCDG)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(MLDG)及びヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(MLHG)を用いた。 ポリグリセリン脂肪酸エステルと水を混合して一晩放置後、食用油を滴下しながらアンカー型撹拌翼で撹拌し、乳化した。予め撹拌翼の回転速度の影響を調べたところ、回転速度50rpmから150rpmまでは回転速度の上昇により平均粒径は低下したが、150rpm以上では変化が見られなくなった。以後、回転速度200rpmで実験した。エマルションの平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置により求めた。乳化剤/油/水の状態は目視、偏光顕微鏡観察、自作の偏光観測装置により判断した。 【結果と考察】乳化剤の中ではMLDGを用いると最も微細なO/Wエマルションが調製できた。相図から、MCDGは液晶相をほとんど形成しないこと、また、MLHGとMLDGは液晶を形成するが、MLHGの液晶が強固で撹拌が不十分になることが微細エマルションを調製できない理由と考えられた。調製されたエマルションの平均粒径とMLDGの相状態及び乳化における課程から、ミセル相だけを経由して乳化されると平均粒径は0.9マイクロメートル以上であり、液晶を含む系を経由すると0.9マイクロメートル以下となり、さらに、液晶を多く含む相を通過すると平均粒径マイクロメートル以下のエマルションが調製されることが分かった。