【研究目的】人体の形状を3D-CAD内で工業用ボディのようなゆとりの入った形に自動変換するための基礎的な資料として、動作による背部体表面の変化を明らかにしようとした。今までの体表面の変化に関する研究は、変化をとらえるための基準線の数が限られており、計測の条件も皮膚の伸展が最大になると思われるような姿勢に限られている。本研究では動作による段階的な体表面の変化を明らかにすることを目的とし、その方法と精度についても検討をした。 【研究方法】被験者は19歳から22歳の若年女性15名で、それぞれ背面と上腕部に格子状の基準線(緯線14本と経線7本)をアイライナーで描いた。計測条件は、45°毎の上肢の挙上と屈曲を組合せた10ポーズと、体幹の前屈・座位姿勢などの4ポーズを設定した。この姿勢を支柱によって保って三次元計測を行い、3D-Rugleで基準線間のトレース長を求めた。それぞれの格子長と立位正常姿勢の値との差を求め比較検討した。 【結果及び考察】経線の長を部位別に観察した結果、いずれの上肢動作でも伸展が大きかったのは後腋点付近で、この部分を中心に量は次第に少なくなる。アンダーバストの高さを中心とする領域では正中線付近の伸展が大きく、ウエストラインの高さ以下はほとんど変化が見られない。屈曲程度により伸展の量は異なるが、この傾向はいずれの動作にも共通していた。また、腕部でも後腋点を通る線の伸展が大きく挙上135°・屈曲135°では平均24.0mmで、身頃のゆとりには腕部の伸びをも同時に考慮する必要があると考えられた。衣服の体表とずれや浮きについても併せて検討しゆるみの設定へつなげたい。