抄録
(目的)複雑な指運動は脳の活動を促すことが報告されており,幼児教育やリハビリ・医学的治療に取り入れられている.しかし,児童においては,便利な生活機器の普及や遊びの変化などにより, 手指の巧緻性を高める機会が減少している.本研究では,糸結びテストと生活・学習などに関する調査をもとに手指の巧緻性に関わる要因を分析し,手指の巧緻性を高めるものづくり学習の意義に対する示唆を得ることを目的とする.
(方法)2008年7~11月,東京都世田谷区内の4小学校の6年生(男子188名,女子174名)を対象に手指の巧緻性を測定する糸結びテスト,質問紙調査(生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,知的好奇心とものづくりへの意識,放課後の生活時間など),学力を測る小テスト(漢字・計算など全7問10点満点)を実施した.
(結果)5分間で完成した糸結び数の平均は男子7.6個,女子11.9個であった.手指の巧緻性の男女差は,価値観・興味関心と生活の自立度の違いよって手指を動かす機会が異なることで生じたと考察する.糸結び数の上下各3割を抽出した糸結び上位群と下位群で比較すると,男女ともに上位群では,生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,ものづくりへの意識において下位群より高い傾向がみられた.また,小テストの得点の上下約3割にあたる成績上位群と下位群の比較では,成績上位群で, 生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,知的好奇心,ものづくりへの意識が高く,糸結び数も多かった.手指の巧緻性に優れることは,生活の自立・手指を使う作業への得意意識とともに学力の高さに関連したことから,ものづくり学習の新たな効果と意義が示されたと考える.