一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
62回大会(2010年)
セッションID: 2C-5
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機能性脂質セラミドの食品素材研究
*田尾 早奈英田中 伸子
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抄録

【目的】スフィンゴ糖脂質の一種であるセラミドは、表皮の角質層に存在する角質細胞間脂質の主要成分であり、肌の水分保持(保湿)機能や外部刺激から肌を保護するバリア機能を持つことで知られている。そして最近では、アトピー性皮膚炎などの乾燥肌や、荒れ肌に効果があるとの期待から、セラミド配合の化粧品や食品に注目が集まっている。一方で、リンゴ果実の搾汁過程において年間約2万tに及ぶ排出量となる搾りかすに、セラミドが豊富に含まれるとの報告がなされ、その有効利用が強く望まれている。そこで本研究では、機能性脂質に関する食品素材研究の一歩として、リンゴ搾汁残渣に含まれるセラミドの化学的特徴について検討を加えた。
【方法】リンゴ可食部を擦りおろし、果汁を搾り取ったその搾りかすを実験試料に供した。実験方法はこれまでに当研究室で行っている魚類の糖脂質分析と同様の方法を用いた。すなわち、Bligh&Dyer法で粗糖脂質の抽出および溶媒分画を行い、その後グリセロ脂質を除去するために弱アルカリ処理を行った。得られた粗スフィンゴ糖脂質は、高分離能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)上で確認しながら、IB吸着カラムクロマトグラフィーでセラミドの分画精製を行った。構成成分分析はガスクロマトグラフィーを用いた。
【結果】溶媒分画後のHPTLC結果では、下層画分のみセラミドの分布が認められ、混在していたグリセロ脂質は、弱アルカリ処理により除去されていた。リンゴから精製したセラミドは、HPTLC上ではダブルバンド(上部61.3%、下部38.7%)であり、魚類の脳から精製単離したセラミドとはRf値の異なる分布パターンを示した。

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© 2010 一般社団法人 日本家政学会
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