【目的】ネギの染色体に、分球性タマネギのシャロットの8種類の単一異種染色体をそれぞれ加えた新しいネギ属植物の創造に成功している(Shigyo et al., 1996)。そこで、添加染色体上の異種遺伝子によって発現させたネギの新たな形質が、ネギが持つ抗酸化性にどの様な影響を及ぼすかを報告してきた。今回は、新たな形質を持つネギを蒲鉾に添加することにより、蒲鉾の抗酸化性を増加させることができるかどうか検討した。 【方法】供試ネギ試料は、染色体工学、すなわち、人工交配による染色体数を増加させる方法で得られた、シャロットの第6染色体を持つネギを使用した。ネギのパウダー含有蒲鉾の試作は、山陽食品工業(株)によって行われた。試料溶液の抽出は70%エタノールで行った。抗酸化性は、米国農務省(USDA)推奨のORAC法を用いた。ORAC法の手順は、定法に基づき親水性ORAC値を求めた。単位は、μmol Trolox当量(TE)/100 gで示した。 【結果】ポリフェノール産生をつかさどるシャロットの第6染色体を持つネギのパウダーを4.8%含有した蒲鉾試作品のORAC値が460 μmol TE/100 g、コントロールとしてのネギのパウダーを4.8%添加した試作品が376μmol TE/100 g、無添加の蒲鉾が166 μmol TE/100 gであった。蒲鉾製造過程の加熱操作により、ネギのパウダーを加えた試作品はORAC値の34%が失活し、第6染色体を持つネギのパウダーを加えた試作品はORAC値の57%が失活した。それでも、第6染色体を持つネギのパウダーを蒲鉾に加える事は、優位に蒲鉾の抗酸化性を増大させる事が判明した。