一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
62回大会(2010年)
セッションID: 2I-3
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高等学校家庭科における多重債務に陥らないための金銭管理教育
*田中 由美子横田 明子
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抄録

目的
近年,わが国では多重債務者が約200~300万人も存在すると推定されており,社会問題化している。この問題解決のため, 貸し手に対する規制として改正貸金業法が 2006年に施行され,借り手に対しては全国の弁護士会等が相談体制の整備や家計管理の指導などを行っている。しかし,金融庁に設置されている多重債務者対策本部が2007年の「多重債務問題改善プログラム」の中で示しているとおり,社会に出る前の高校生段階で,具体的な事例を用いて教育することによって消費者自らの意識を高め,予防することが効果的であると考えられる。
そこで,本研究では,将来多重債務に陥らないための高等学校家庭科における金銭管理教育とはどのようなものであるかを明らかにすることを目的とした。
方法
(1)多重債務を実証的に分析した文献から,その要因を抽出した。(2)諸外国の金銭管理教育の内容を検討した。(3)(1)(2)の結果から多重債務に陥らないために必要な教育内容を明らかにした。(4)(3)に沿った授業案を提示した。(5)授業案に基づいて授業実践を行い,授業前後に生徒の意識,行動,知識について調査し,教育効果を明らかにした。
結果
(1)多重債務の要因分析の結果,多重債務者に欠如している主な要因として,知識,消費欲求の抑制,金銭管理能力,情報選択能力,意思表示力の5つが挙げられた。(2)諸外国の金銭管理教育には,信用の構築,税・社会保険と賃金の関係,お金の記録と方法,広告と影響力が含まれており,極めて重要であると判断されたためこれらを授業用教材に取り入れた。(3)(1)(2)を踏まえた授業実践後,生徒の意識,行動,知識それぞれに向上が見られ,多重債務に陥らないことを目的として作成したワークシートおよび授業の教育効果が明らかとなった。

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© 2010 一般社団法人 日本家政学会
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