抄録
目的 現在,日本では年間1,900万tの食品廃棄物が排出されており,そのうち食品ロスが500~900万t含まれると推計される。本研究では女子学生の調理実習における廃棄率と食品ロスに関する現状の把握を目的とした調査を実施した。
方法パネルは,N女子大学生活環境学科2年生(KA2)39名,3年生(KA3)36名及び家政経済学科2年生(KE2)58名である。廃棄率調査の試料は玉ねぎ,里芋,オレンジ,キウイ,鯵とし,基準値として食品成分表の値を使用した。結果は多重比較検定で解析し,統計的有意水準を5%以下で示した。さらに食品ロスについて自記式アンケートによる調査を実施した。
結果廃棄率の玉ねぎでKA2が有意(p<0.01)にKA3より値が低かったが,その他の材料では3群の間に有意差は認められなかった。野菜,果物及び芋では3群共に基準値より高く,魚では3群共に基準値より低かった。総体的にKE2が他の2群より低い廃棄率値を示し,その要因として一人暮らしの学生が多く,調理の機会が他の群より多いことが示された。アンケート結果から食品ロスの意味を知っているパネルは約33%で,食品ロスが一番多いと思う食材では魚類と野菜類が多かった。食品ロスの経験があるパネルは約68%で,その理由として賞味期限切れが最も高く,消味期限切れの判断は主に食品の色と臭いで選択していた。以上の結果より,女子学生では食品ロスが多い現状が示され,その主な要因が食材の管理不足であることが示された。また,食品の品質を判断できる知識の習得とその経験及び調理技術の向上が食品ロスを減少させるために重要であると考えられた。