一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
セッションID: 3G-11
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5月29日
被服整理学および染色加工学における実験環境に関する調査
*大津 玉子片山 倫子
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キーワード: 実験環境, 化学物質, リスク
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抄録

目的 被服整理学や染色加工学で行われている実験・試験方法は、生活者の視点に立った安全安心な衣生活実現のために、今後、社会の中でますます重要性を増してくるものと予測されるが、実際には化学物質のリスクや危機管理への対応は必ずしも十分ではない。本研究では、被服整理学、染色加工学の教科書などに記載されている危険性のある化学物質や試験法を抽出するとともに、学生実験における試薬の取り扱い、試験法、危険防止対策などについてアンケート調査を行い、実態を把握したうえで、より安全で有効な改善策を提案することを目的とする。
方法 過去50年間に発行された教科書、参考書30冊に記載されている化学物質および試験法を調べ、危険性のある薬品と試験方法を抽出した。また、全国の家政系、生活科学系学科で被服科学系科目を担当している教員を対象にアンケート調査を実施した。
結果 教科書の調査結果をみると被服整理学分野では、四塩化炭素を使用した汚染布の作成法やクロロホルムによる界面活性剤の定量法が記載されている。染色加工学分野では、発がん性のあるオーラミンやベンジジン系染料、特定アミン類を生成するアゾ染料、また、重クロム酸カリなどの記載が認められた。アンケートからは少数ではあるが、界面活性剤の定量実験でクロロホルムの使用例や、汚染布の作成・しみ抜き・ドライクリーニング試験で有機溶剤の使用例、ベンジジン系染料、重金属の化合物などリスクとなり得る薬品の使用が認められた。また、半数以上の大学では安全確保のためのドラフトや洗浄設備が未設置である。以上のことから化学物質や試験法におけるリスクの指摘やリスクを排除するための情報を教科書に記載することの重要性が示唆された。

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