一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3F-1
会議情報

口頭発表 5月13日 家政学原論、家庭経営・経済、家族
家計簿記帳にみる雇用者世帯の家計動態
*重川 純子森田 明子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

目的 約半世紀にわたり記帳された家計簿を資料に、子の成長や住宅購入、退職などの家族環境の変化と、高度経済成長や石油危機、バブル景気などの社会環境の変化が家計運営に与える影響を明らかにする。
方法 資料:昭和29年から平成10年まで記帳された家計簿(家族構成員;夫、妻(記帳者)、長男、次男、居住地;首都圏、ほぼ夫のみ勤務(高校教員))。収入、支出、貯蓄それぞれの費目の年合計を計算し、それを12で除した年平均1ヵ月当たりの家計費を求めた。
結果 高度経済成長期には収入が順調に伸び、石油危機後も人材確保法制定の影響もあり実質収入額はそれ以前の水準を維持している。夫退職後しばらくは収入が夫の公的年金のみとなり大きく減少したが、後に妻の年金と夫の追加的な年金が加わり比較的高水準の年金を得ている。支出は収入の伸びや子の成長とともに増加している。住宅関係の高額支出が3度あり、いずれもその前年には支出を抑制している。昭和49年には翌年の高額支出への備えに加え、物価高騰により実質支出は大きく減少した。夫退職後は、次男独立も影響し、衣食住などの必需的支出が減少し、選択的支出が増加した。住宅購入資金の多くを預貯金と株売却により賄っている。親の宅地内に居住し、家賃相当分を含め積極的な貯蓄活動を行い、住宅購入という大型支出に対応している。収入減少や高額支出への対応方法として、食料費以外の支出の抑制や積極的な貯蓄活動が行われた。収入増加と子の成長が重なり、支出の増加に対応しやすかったと考えられる。住宅購入は石油危機後やバブル経済期であったが、総じて社会環境の変化を追い風に、記帳者の生活への価値観に基づく将来を見通した家計運営が本家計を支えていた。

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top