目的 入院患者にとって,嗅覚,味覚,触覚の感度が変化し,食事量が減り,栄養状態が悪くなりやすいことが知られている.予備調査より,化学的療法を受けている患者だけでなく,入院患者全体に,嗅覚,味覚の変化は病気後高い割合で起こっており,これらの食事の対応が必要であることがわかった.特に,魚や肉および飯の臭いが気になる患者の多いことから,これらのにおいを抑制するレシピは食事量を増加させるレシピと考えた.方法 においを抑制すると考えられる調味料,香草,香辛料,うま味成分を用いて,焼き魚,煮魚および飯,粥などを調製し,におい識別装置でにおい成分を測定し,官能評価を行った.におい識別装置とポータブル型ニオイセンサーを比較し,調理現場で簡便に使用できる方法の適否も検討した.結果 パネルは官能評価に詳しい教員2~5名で行い,酒類(清酒・赤酒・本みりん),白ワイン,酢,緑茶,かんきつ類,しょうが,ねぎ,ローリエ,トマト,昆布水などを用いた焼き魚および煮魚では,その魚臭は抑制されていた.これらのにおい識別装置によるトリメチルアミンの値は,無添加試料より低く,いずれも抑制効果がみられた.ニオイセンサーのピークレベルは,匂い識別装置と同様の値を示し,調理現場での目安として使用できると考えられた.抑制効果およびマスキング効果の大きかったマヨネーズ,ごま,バターを使用したまぶす料理等も効果があった.