目的 熊本県特産の郷土酒の赤酒は、本みりんと糖度、アルコール度がほぼ同等で、調味料として使用されている。これまでに、赤酒の成分溶出抑制や味の浸透性向上、てり・つやの付与は、本みりんと同等またはそれ以上であることを報告した。そこで、本研究では、赤酒のにおい抑制効果に着目し、飯臭に及ぼす影響を検討した。
方法 平成25年度産コシヒカリ無洗米(株式会社神明)を用い、浸漬後に米重量の1.7%の料理用赤酒(瑞鷹株式会社)または本みりん(タカラ酒造株式会社)を添加した。対照として、添加なし米を炊飯した。炊飯後、室温に30分放置し、そのにおいを、におい識別装置(株式会社島津製作所 FF-2A)で測定し、「臭気寄与」、「類似度」、「臭気指数相当値」を比較した。飯のテクスチャーは、クリープメータ(山電株式会社RE2-33005B)で測定し、官能評価を行った。
結果 飯の「臭気指数相当値」では、添加なし飯12.5、赤酒飯17.9、本みりん飯17.7で、赤酒飯および本みりん飯が添加なし飯より高かった。添加なし飯では、「臭気寄与」で、有機酸系が検出された。赤酒と本みりんを添加した飯では、アミン系、アルデヒド系、エステル系、芳香族系、炭化水素系が検出された。赤酒を加えた飯の官能評価では、飯臭が抑えられ、後味が弱くなる様子が見てとれた。赤酒のマスキング効果によるものと考える。