一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
67回大会(2015年)
セッションID: 2P-32
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ポスター発表 5月23日 食物
奈良時代の日常の食事と加工品の復元
*西念 幸江五百藏 良三舟 隆之
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キーワード: 奈良時代, 日常の食事, 復元
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抄録



目的 近年平城京跡出土木簡などによって古代の食品が判明しつつあるが、その調理法はほとんど不明である。そこで本研究では、古代の食品の加工および調理法を復元することを目的とした。
方法 木簡に見える食材の一つに海藻があり、「正倉院文書」から写経所で一日一人当たりに支給されている量が判明するので、それを復元するために調理した。また木簡に見える堅魚煎汁は調味料として使用されたと考えられるが、産地の伊豆国は遠隔地である。保存上の問題を調べるため、堅魚の煎汁(市販品)を常温(25℃)で20日保存し、一般細菌数を測定した。
結果 写経所で支給された海藻類は、平城京跡出土木簡例の単位から乾燥品と考え、「正倉院文書」の例では、海藻(わかめ)、滑海藻(あらめ)とも浸漬前の重量は一両(41.9g)であるが、浸漬後の量はかなり増え、滑海藻は257g(約6.1倍)となった。一方堅魚の煎汁からは、細菌は全く見られなかった。
考察 堅魚煎汁から細菌が検出されなかったことによって、遠隔地から貢納されても十分保存性がある可能性が高まった。一方海藻類も、産地から平城京までの輸送や保存を考慮すると乾燥品と考えられるが、戻した乾燥品の量が一人分としてはとても多いことから考えて、どのように調理したかをさらに検討する必要が生じた。今後はさらに食品の加工、保存法と共に、支給された食品の調理法と栄養価から、古代の官人の健康状態を検討したい。

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