目的 時代による食生活の具体的変化を、その背景とともに明らかにすることにより、個々人の食生活の変化と社会的構造の変化による食生活の変化との相互関係を明らかにすることを目的として地元出身の証言者を対象に調査をおこなった。
方法 岩手県北部沿岸に位置するN村の70代~80代の女性生活者グループのメンバー13名を対象に、平成26年6月から平成27年1月にかけて計4回にわたり、およそ50年前と現代の食生活とその背景について聞き書きをおこない、両年代による比較をおこなった。
結果 50年前の食生活は自家製の野菜が中心であった。たん白源は鶏の卵、近くの浜で入手できる魚介類、大豆から手作りする豆腐などであった。これらのたん白源となる食材のうち、自家で生産していないものは野菜と物々交換で入手していた。主食は野菜、海藻を混ぜた粥や雑穀飯であった。食生活の基本は自給自足であり、食べることと働くことが直結しており、店で購入するものはほとんどなかった。現在の食生活では店で購入するものが増えたが、野菜、芋、豆などは依然、畑や庭で複数の作物を育て、日常生活で使用している。自給自足の習慣は残っているが、家族員の減少や行政等による健康情報は調査対象者の調理方法に影響を与え、料理が変化していることが窺えた。しかし、若い世代が好む新しいメニューを自分のものとして取り込む傾向はみられなかった