目的 大正期から昭和50年代にかけて、仙台地方で多数生産された染物に浴衣と手拭があった。筆者らは、仙台地方の染色製品等について明らかにするために、当時使用された注染用型紙862枚について調査と文様の電子化を行った。引き続き、調査対象の染色工場所蔵の型紙保存箱約10個のうち第5番(全89枚)の注染用型紙について調査した結果を報告する。
方法 注染用型紙の保存状態・文様等の調査、CCDセンサー・イメージスキャナによる型紙文様の電子化を行い、これまでの結果と比較した。さらに、電子データを活用するために、破損・欠損文様を電子的に補修しデータベースを作成した。
結果 破損・欠損箇所のある型紙は89枚中46枚(51.7%)と半数を占めた。型紙保存箱第4番までの傾向と比較しても破損・欠損型紙が多い結果となり、次のスキャニングの工程に進めない破損型紙も4枚あった。柄行については、名入れ型紙が71.9%であった。そのうち、名入れ手拭(32.6%)と名入れ浴衣(32.6%)で全体の半数以上を占めた。また、名入れの見られない趣味の浴衣は27.0%であった。文様を分類したところ、名入れ型紙が多かったため幾何文(43.8%)と文字(33.7%)が多く見られた。趣味の浴衣では、植物文様が24枚中16枚を占めた。さらに、汎用画像処理ソフトを用いて破損・欠損箇所の補修を行った型紙画像は『仙台型染資料集Ⅶ』(紙媒体と電子書籍)にまとめた。なお本研究は、JSPS科研費24700780の助成を受けて行った。