主催: (一社)日本家政学会
会議名: (一社)日本家政学会第68回大会
回次: 68
開催地: 金城学院大学
開催日: 2016/05/27 - 2016/05/29
目的 羊毛繊維のフェルト化は,水分,摩擦効果の異方性,物理的作用が関係していることは知られている。また,水分にアルカリや酸が含まれるとフェルト化は促進するとされ,温度なども少なからず影響しているといわれている。しかしながら,そのメカニズムを裏付ける資料やデータが明らかでない。本研究では,温度およびpH,処理時間,界面活性剤の有無が、表面状態すなわちキューティクル(スケール)組織に与える影響の検討を行なった。 方法 羊毛繊維はメリノ種(ニュージーランド産)をそのまま用いた。pHは,酸性は酢酸(Wako),アルカリ性はNaOH(Wako)を用いて調整した。装置はPentaView LCDデジタル顕微鏡(CELESTRON)を用いた。撮影条件を,明るさ+3,しぼり6とし,ホールスライドガラスを使用した。乾燥状態の羊毛繊維(約6㎝)で封入剤を使用せずスライドガラス上に固定し,溶液を滴下したのち,羊毛繊維表面のキューティクル(スケール)組織の変化を,定点撮影した。 結果・考察 水道水20℃で,pH4,pH6.5~7,pH10で処理したところ,pHによる表面状態の相違は認められなかった。pH6.5~7水道水で20℃,40℃,60℃で処理した場合も,表面状態に相違は認められなかった。一方,20℃で界面活性剤を添加した場合,スケールの立ち上がりが認められ,表面の凹凸の変化が見られた。界面活性剤を添加することにより,表面張力が低下したため,繊維表面がぬれやすくなり,スケールの隙間に水が入りやすくなったためと考えられる。