抄録
目的 これまで、和食以外にも広く減塩食のおいしさを向上させることを目指して、チキン・ブイヨン(CB)の減塩効果について検討した結果、CBに塩味増強効果を認めたが、「鶏・鶏がらのみ」または「野菜・香辛料のみ」で調製したブイヨンには効果が無く、また、調製中に起こる鶏・鶏がらと野菜・香辛料由来成分間相互作用によって塩味増強効果が生じることも否定された。そこで、どの食材が鶏肉と共存すると塩味増強効果が生じるかを検討するために、基本の食材からニンジン、セロリまたはユリ科の食材(タマネギ、リーキ、ニンニク)を抜いたブイヨンとCBの塩味増強効果を官能評価にて検討した。
方法 各ブイヨンのうま味強度を0.15%、塩分濃度を0.62%~1.00%の5段階に調製した試料を、0.80%NaCl溶液とそれぞれ組にして60℃で提供し、被験者に、各組より塩味が強いもの、塩味の強さが好ましいものを回答してもらった。
結果 プロビット解析の結果、すべてのブイヨンに塩味増強効果が認められ、食材の相異による有意な差は認められなかった。しかし、ユリ科の食材を抜くと効果が低い傾向にあり、ユリ科の食材が塩味増強効果に寄与している可能性が期待された。また、セロリには塩味を緩和させる作用があることが示唆された。さらに、被験者がノーズクリップを着用した条件で検討したところ、CBの塩味増強効果には香りではなく味が関与していることが明らかとなった。