有孔虫の殻壁構造(とくに石灰質ガラス状殻壁)の光学的性質は, 主に分類学的な利用のもとに論議されていた.これについて, Nomura(1983a, b, 1984)が議論してきたように, 放射状や粒状の各組織には変異的な組織が存在し, これらは有孔虫の生態を反映していることを指摘した.とくに粒状組織は結晶単位の定量化ができることを指摘する.定量化することで, これまでのような種名を参照した生態や古生態の復元では, その適用に限界があったにもかかわらず, その適用の幅を広げれる可能性ができたといえる.とくに, 現世種との共通性が少なくなる後期中新世以前の有孔虫の生態や古環境の解析には重要な手段となりうることを指摘したい.そのためにも, 有孔虫の生態を殻のサイズや殻壁の光学的性質でもって定量的に検討し, 基礎的な情報をさらに追加していく必要がある.