2016 年 40 巻 3 号 p. 920-923
上腕二頭筋長頭腱病変に対して近年では積極的に腱固定・切離を行う傾向がある.今回我々は,腱板断裂に合併して上腕二頭筋長頭腱病変のある症例に対し,これを温存または腱固定・切離を行いその治療成績を前向きに比較検討した.
上腕二頭筋長頭腱に実質部1/2以上の部分断裂を認めた22例を対象とした.12例には上腕二頭筋長頭腱を温存し,10例に対しては腱固定・切離術を行った.術後1年時の臨床所見と,Visual Analog Scaleによる疼痛評価について検討した.
上腕二頭筋長頭腱病変を認める腱板断裂症例の術後成績は上腕二頭筋長頭腱温存群,腱固定・切離群ともに概ね良好であった.両群間で術後1年時の臨床成績に有意な差はみられなかった.
今回我々は部分断裂のある上腕二頭筋長頭腱に対して温存をはかった症例と,腱固定・切離を行った症例の術後経過について前向きに検討した.いずれの方法も短期的に良好な成績が得られたが,どちらを選択すべきかは今後検討の余地があると考えられた.