抄録
サツマイモは,鹿児島県の畑作営農の基幹作物で用途には,でん粉用,焼酎用,加工用,青果用がある.栽培され
る品種は用途で異なり,でん粉用では「シロユタカ」や「ダイチノユメ」,焼酎用では「コガネセンガン」,青果用では
「ベニサツマ」,「べにはるか」が用いられている.ネコブセンチュウ被害には,“裂開” や“くびれ” の症状が報告され
ており,各品種のネコブセンチュウ抵抗性は,明らかになっている.しかし,品種による発生症状についての報告はな
く,今回主要栽培品種の被害発生時の症状の違いについて知見が得られた.試験は2016〜2018 年に鹿児島県農総センター大隅支場の黒ボク土ほ場で,4月中旬植えの黒マルチ栽培で行った.青果用品種では,上いものネコブセンチュウ被害率に品種間で差があり,「べにはるか」の4.1%に対し,「ベニサツマ」は45.6%と高く,2品種のネコブセンチュウ抵抗性の程度を反映した結果であった.収穫いもの被害調査では,被害の種類に“裂開” と“くびれ” があり,品種により症状に違いがあった.「ベニサツマ」は“裂開”,「べにはるか」は“くびれ” がほとんどで,「コガネセンガン」は“裂開”が多いものの“くびれ” も発生した.でん粉用等品種では,「シロユタカ」は“裂開” と“くびれ” とも発生し,「ダイチノユメ」は“くびれ” がほとんどであった.原料用品種のネコブセンチュウ抵抗性は,「シロユタカ」および「ダイチノユメ」とも“強” で抵抗性程度を反映した結果であった.でん粉用品種では生産コスト低減のため,栽培時の防除を行わないが,「コガネセンガン」では被害が多いため必要である.青果用の「べにはるか」は,抵抗性が“強”のため“裂開” はないが,“くびれ”が発生するため,良品生産の観点から防除が必要である.