九州歯科学会雑誌
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ネパール住民における上顎中切歯の捻転について
佐熊 正史中村 修一仙波 伊知郎安部 一紀大野 秀夫小川 孝雄
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1994 年 48 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

下顎中切歯の近心舌側捻転(winged teeth : WT)はモンゴロイド集団に特徴的に認められる形質と考えられている.一方, 遠心舌側捻転(counter-winged teeth : CT)はコーカソイド集団に比較的高い頻度で認められる.今回は上記のような上顎中切歯の特徴的な配列について, ネパール国住民70名から得られた歯牙石膏模型をもちいて検索した.上顎中切歯が示す捻転状態はDahlberg(1959)の分類に基づいて判定し, 以下のような結果を得た.両側性遠心舌側捻転はモンゴロイドや太平洋集団に比べ, ネパール人では比較的高頻度に見られ, コーカソイド集団にやや類似していた.一方, 近心舌側捻転の頻度はネパール人ではモンゴロイドや太平洋集団より低かった.これらの結果からは, ネパール人における上顎中切歯捻転の様式はコーカソイド集団に比較的類似しておりモンゴロイドや太平洋集団とはやや異なると考えられた.ネパール人における上顎切歯部の歯列異常については, 叢生が70例中わずかに4例見られたにすぎない.一方, 側方および正中歯間離開は各々7.14%および4.29%に認められた.また, 上顎中切歯における捻転と配列異常の頻度には有意な相関は認められなかった.このことから, 上顎中切歯の捻転様式は歯間の離開や狭窄によるものでなく, 歯根の形態など, 他の要因によるものと考えられた.

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© 1994 九州歯科学会
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