九州歯科学会雑誌
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新しい齲蝕活動性試験法の有用性
石 四箴
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1998 年 52 巻 5 号 p. 613-623

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抄録

齲蝕罹患率の減少や予防のために様々な研究が行われている.齲蝕活動性試験はその中の一つであり, 現在は数種類の齲蝕活動性試験法が使われている.永久歯よりも乳歯の時点から着手することが最も有効な手段であるが, いずれの方法も高価なものであるから, 広範囲(特に中国の場合)に普及することが困難だと思われる.そのため, 上海鉄道大学式齲蝕活動性試験(以下SCATと略)という新しい齲蝕活動性試験方法を開発した.本研究は, この試験法の乳歯齲蝕状況を予測する手段としての有用性を調べたものである.SCATは歯垢からの酸生成能による試薬の変色を利用し, 標準色溶液との比較から齲蝕活動を4段階に分類している.就学前の小児398名についてSCATによる試験を行い, その結果を口腔内診査から得られた齲蝕状況と対比し, 検討を加えた.また, 従来からあるDentocult LB試験およびDentobuff strip試験も同時に行い, これらの結果と齲蝕状況との関連についても比較検討した.4段階のSCAT齲蝕活動度の間で, 齲蝕罹患率, dftおよびCSI(齲蝕重度指数)に高度な有意差がみられ, 齲蝕活動度と各々の間には正の相関が認められた.本研究の結果では, Dentocult LB試験では口腔内診査と一部に相関がみられたが, Dentobuff strip試験では相関は認められず, SCAT齲蝕活動度が齲蝕状況と最も密接な関連性を示した.以上の結果は, SCATが乳歯の齲蝕罹患を予測できるすぐれた手段であることを示しており, 操作が容易であること, 経済的であることなどの利点とともに有用な試験方法であることを示唆している.

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© 1998 九州歯科学会
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