九州歯科学会雑誌
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原著
誘電分極を利用した電気化学的免疫センサーの開発
柳田 泰志
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2010 年 63 巻 5.6 号 p. 260-267

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抄録

病気の診断や進行を把握する上で,試料中に含まれるサイトカインなどの生理活性物質の定量には酵素免疫検査法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay: ELISA)が一般に用いられている.歯科領域でも歯肉溝浸出液や顎関節滑液中に含まれるサイトカインなどの生理活性物質の分析は重要である.このような研究結果はすでに報告されているが,一般歯科臨床の現場でこのような分析を行うには,試料の量,操作性や分析時間など解決しなければならない問題も多い.近年,バイオマイクロセンシング技術の進歩で,ごく微量の資料から生理活性物質を測定する試みが広くなされている.今回,私は誘電分極を利用した免疫センサーの開発を行い,歯科における臨床応用の可能性について検討した.この免疫センサーはセンサーセル電極上に絶縁体を主成分とする膜を作膜し,その上に特定の抗体を固相化することで作製した(抗体が固相化された膜を感応膜という).測定方法は極微量の試料をセンサーセル上に滴下するだけで濃度の違いを電圧の変化として検出するものである.
今回筆者は(1)センサー作製に適した絶縁体膜の成分・性状,(2)絶縁体の膜への抗体の固相に適した抗体濃度と固相化時間,(3)抗マウスIgG抗体を固相化したセンサーによるマウスIgG抗原の検出,(4)各種サイトカイン(IL-1α,IL-1βおよびTNF-α)の検出,の4点について検討した.
(1)に関しては,SiO2を含有させた絶縁体に表面エッチング処理したものが感応膜に最適であることが明らかとなった.(2)に関しては,抗体濃度が100μg/mlで30分間の処理が固相化に最適であることが判明した.(3)に関しては,前記の条件で,抗マウスIgG抗体を固相化したセンサーによりマウスIgG濃度を濃度依存的な電圧変化として検出する傾向がみられた.(4)に関しては,いずれのサイトカインにおいても,濃度によって電圧が変化する傾向にあった.以上の測定に要する試料の量は3μlであり,1回の測定時間は約7分であった.
以上より,誘電分極を利用した免疫センサーは極微量の試料でも短時間で簡便に抗原抗体反応量を数値化できることがわかり,歯科の臨床検査法としての応用の可能性が示された.

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