九州歯科学会雑誌
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原著
社会的ニーズに対応した歯科保健医療教育プログラム開発のための調査研究
井上 博雅吉野 賢一久保田 浩辻澤 利行園木 一男吉田 成美高見 佳代子粟野 秀慈仲西 修柿木 保明西原 達次
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2010 年 63 巻 5.6 号 p. 277-290

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抄録

医療現場における口腔ケアと摂食・嚥下リハビリテーション(以下,摂食嚥下リハ)の現状と課題を把握し,この分野で貢献するべき人材を育成するための教育プログラムを構築することを視野に入れ,アンケート調査を実施した.調査は平成18年(以下,今回)に,福岡県内の病院,高齢者・障害者施設(以下,施設)および歯科医院を対象として行われた.必要に応じて平成16年(以下,前回)に病院と施設において実施された同様の調査と比較,検討した.今回の調査では病院と保健施設の,それぞれ95.1%,94.9%が口腔ケアを,73.2%,23.3%が摂食嚥下リハを実施していると回答した.また,前回の調査と比べ,口腔ケア担当者の職種として第一位は看護師であったがその割合は減少し,より口腔領域の専門性が高い歯科医師,歯科衛生士,言語聴覚士などの割合が増加していた.一方,摂食嚥下リハにおいては,より多くの医療職が関与して実施されているとの回答が得られた.この結果は,摂食嚥下リハにおけるチーム医療によって実施されていることを反映したものと考えられた.口腔ケアおよび摂食嚥下リハに携わる人材には,「口腔機能管理における専門的知識と技術」と「高齢者に対する知識や介護技術」,ついで「栄養学的知識の習得」の知識と技術が求められた.高齢社会に対応できる口腔保健の専門家が求められると同時に,チーム医療,とくに栄養補給チームの一員として貢献できる人材が求められていると考えられた.以上のことから,口腔ケアと摂食嚥下リハを担当する口腔保健の専門家(とくに歯科衛生士)には,口腔機能管理における専門的知識と技術のみならず,社会的ニーズに伴う高齢者に対する知識や技術,他の医療職との連携がさらに重要になる将来的医療環境に対応できる知識(とくに栄養学的知識)を習得させる教育プログラムが必要であると考えられた.

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© 2010 九州歯科学会
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