九州歯科学会雑誌
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急速に増大した膿原性肉芽腫の1例
高橋 理
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キーワード: 膿原性肉芽腫, 口唇, 血管腫
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2023 年 77 巻 3-4 号 p. 40-44

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抄録
膿原性肉芽腫は粘膜および皮膚に発生する肉芽腫性病変であり,臨床的には無痛性で易出血性の隆起性腫瘤を呈する. 今回われわれは口唇に発生し,短期間に著しい増大を認めた膿原性肉芽腫を経験したのでその概要について報告する. 患者は83歳の女性.左下唇を誤咬した際に出血を認めたため近在歯科医院を受診.縫合処置にて止血したが,その後も同部位を複数回誤咬し,徐々に腫瘤を形成してきたため精査加療目的に当院を紹介となった.初診時,左下唇には12mm大の暗赤色でわずかに隆起した境界明瞭な腫瘤を認め,臨床的に血管腫と判断し全身麻酔下にて切除生検を 行う方針とした.初診から約2週間後の術前検査で受診した際に腫瘤は17mmまで増大し,さらに1週間経過した時点で腫瘤は25mmとなり,口唇閉鎖困難で接触による出血も頻回に認めるため入院となった.入院後も急速な増大を 示し,初診から約1か月後の手術時には40mmの有茎性腫瘤となっていた。手術は全身麻酔下にて周囲の口唇も一部含めて切除を施行し,創部は縫縮とした.最終病理組織学的診断は膿原性肉芽腫であり,術後2年経過するも再発は認めない.
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© 2023 九州歯科学会
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