九州歯科学会雑誌
Online ISSN : 1880-8719
Print ISSN : 0368-6833
ISSN-L : 0368-6833
ラット行動実験による食品テクスチャー認知の探索
中富 千尋
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 79 巻 3 号 p. RV00012-

詳細
抄録
日本語には,「もちもち」,「カリカリ」,「シャキシャキ」 などといった,食品テクスチャー(食感)を表す言葉が豊 富に存在し,食感は食品のおいしさを左右する重要な要 素である.また,咀嚼時には歯根膜,舌口蓋粘膜,閉口 筋筋紡錘で食品テクスチャーを感知し,咀嚼力や咀嚼リ ズムを調節している.嚥下時には,食塊が嚥下可能なテ クスチャーかどうかを判断することにより,安全な嚥下 を可能にしている.このように,食品テクスチャー認知 は,摂食嚥下過程においても重要な役割を担っている. しかしながら,これまでの食品テクスチャー研究は主に 機器による物性測定やヒトの官能評価に依存しており, 末梢でのテクスチャー刺激の受容や,認知に関わる神経 回路といった生理学的メカニズムの解明は進んでいない.このように食感認知研究が進まない要因として,動 物実験系を用いた食感認知の評価が困難であることが考 えられる.  筆者らは,味認知の影響を排除した条件下で,ラット を用いた食品テクスチャー認知評価系の構築を試みてき た.これまでに,嫌悪および嗜好条件付け学習試験を応 用することで,粘度,弾力性,硬さ,微粒子の認知が可 能であることを実証しており,本総説ではこれらの実験 系を紹介する.今後は,神経活動の可視化や操作と組み 合わせることにより,口腔感覚情報の中枢処理メカニズ ムの全容解明が期待される.
著者関連情報
© 2025 九州歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top