骨格筋の起始と停止から作用を理解する考え方を、初修者向けに説明した。筋は基本的に、力を出すとき収縮して短くなり、筋の停止が起始に向かって引かれる。その際、筋の作用は、起始と停止の間にある関節で起こるので、関節の可動性によって制約を受ける。筋の作用はしばしば3次元で起こるため、屈曲/伸展、内転/外転、内旋/外旋の3種類の運動に分けて、テコの原理にもとづいて理解すると分かりやすい。簡単に言えば、筋の作用は、3次元的に起始と停止間の距離が最も短くなるような運動である。したがって、起始と停止の位置関係を知り、その間にある関節の可動性が分かれば、筋の作用を合理的に推測できる。具体的に説明するため、棘上筋、棘下筋、広背筋、肩甲挙筋、前鋸筋と中・小殿筋を取り上げ、起始と停止から筋の作用を理解する考え方を説明した。また、全身の各部位には機能が似た筋が集まって存在する傾向があり、これらの筋を筋群と呼ぶ。同じ筋群に属する筋は、起始あるいは停止が共通な場合や、支配神経が同じであることも多い(例:前腕前面の筋、下腿後面の筋、ハムストリングス、内転筋群)。そのため、筋の起始、停止、作用と支配神経を学習する場合、全身には多くの筋があるので、はじめは全身の筋を筋群に分けて大まかに把握し、各筋群に共通する特徴を理解した後に、個別の筋を理解するのが良いと思われる。