2024 年 23 巻 1 号 p. 3-10
褥瘡の発生には虚血再灌流障害およびそれによって発生する一酸化窒素(NO)が関与している。また糖尿病も創傷の治癒遅延に関与しているが、糖尿病における創傷がNOによって受ける影響は不明である。そこで本研究では、糖尿病における圧迫創の病態とNOの動態との関連を検討した。7週齢雄性SDラット12匹を用い、2時間ネオジム磁石で圧迫、2時間解放を2回繰り返し、圧迫創を作製した。初回圧迫前および各圧迫解放時に採血を行い窒素酸化物(NOx)量を測定した。作製した圧迫創を経日的に観察し、創作製7日目に創部皮膚を摘出し組織学的検索を行った。糖尿病群は対照群に比べ明らかな創の治癒遅延を認めた。また糖尿病群は全測定時において血中NOx量が有意に低値を示した。このことから、糖尿病群における創傷治癒遅延には、血管弛緩性に働くNOS由来のNOの相対的低下による創部への血流障害が一因である可能性が考えられた。