結核
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原著
Mycobacterium fortuitumを対象としたZiehl-Neelsen染色法と蛍光染色法における抗酸性の比較検討
吉田 志緒美露口 一成鈴木 克洋富田 元久岡田 全司林 清二有川 健太郎岩本 朋忠
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2013 年 88 巻 5 号 p. 461-467

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抄録

〔目的〕Mycobacterium fortuitumを被験対象とした場合のZiehl-Neelsen染色法(ZN法)と蛍光染色法(蛍光法)の染色性の比較検討。〔方法〕2007年1月~2012年3月の期間中,NHO近畿中央胸部疾患センターにてMGIT培養で陽性となり,DDHにてM.fortuitumと同定された菌液42株と標準菌株を対象に,蛍光法であるauramine-rhodamine染色法(AR法)並びにacridine-orange染色法(AO法)とZN法の染色所見を比較した。さらに各菌株に対し16S-23S rDNA internal transcribed spacer(ITS)領域における遺伝子と16S rRNA遺伝子の部分配列シークエンスを実施し,相同性検索を行った。〔結果〕ZN法にてすべての株は良好な染色性を確認できた。AR法は16株(38.1%)に良好な染色性を認めていたのに対し,残り26株(61.9%)と標準菌株では蛍光法でほとんど染まっていないか,まだら模様の染色像であり,AO法もやや劣るがAR法と同程度の結果であった。ITSシークエンス解析では35株(83.3%)がM.fortuitum subsp. acetamidolyticumの遺伝子と100%一致したが,7株は同定不能であった。しかし16S rRNA遺伝子シークエンスにてM.fortuitum近縁の迅速発育菌と同定できた。遺伝子型と蛍光法の染色性との間における相関性は乏しかった。〔考察〕DDHでM.fortuitumと同定された菌体に対して蛍光法を用いた場合,検出が困難となるケースが半数以上存在する結果となり,同菌の分離頻度が過小評価される可能性が考えられた。特に,培養菌液からの菌体確認には蛍光法よりもZN法を用いることと,培養性状による同定(発育速度,温度,コロニー形状)の徹底を提唱したい。

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© 2013 日本結核病学会
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