2004 年 79 巻 6 号 p. 397-400
膜炎を合併した非結核性抗酸菌症の報告は稀であり, 今回私たちは胸水貯留を認めた肺M.kansasii症の1例を経験したので報告する。症例は60歳男性。数ヵ月前より続く全身倦怠感, 右肩凝り, 発熱を主訴に近医受診。胸部X線上, 右上葉の浸潤影を指摘され, 肺炎の診断で一般抗生剤の投与を受けるも改善せず, 肺結核疑いで平成15年5月7日当科入院となった。入院時, 右胸水を認め, 胸腔穿刺を行ったところ滲出性胸水でAdenosinedeaminase(IADA) は66.1U/lと高値を示した。また, ツベルクリン反応が強陽性であったことより肺結核を疑い, 気管支鏡検査を施行した。右B1aおよびB2aより行った経気管支肺生検では, 類上皮細胞肉芽腫病変を認め, 気管内吸引痰, 気管支擦過浮遊液, 気管支洗浄液のいずれの検体からも培養検査で M.kansasii が検出された。国立療養所非定型抗酸菌症共同研究班の診断基準より肺 M.kansasii 症と診断し, RFPを含む3剤の治療を行った。以後, 胸水再貯留は認めず, 全身状態良好で6月6日退院となった。