結核
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肺結核短期強化療法に用いるPyrazinamideの副作用である高尿酸血症の疫学調査
滝 久司小川 賢二村上 達也二改 俊章
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2008 年 83 巻 7 号 p. 497-501

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抄録

〔目的〕Pyrazinamide(PZA)は肺結核治療の短期強化療法のなかで初期2カ月間に投与される抗結核薬である。抗結核薬の副作用はさまざまであるが,このうちPZAが原因と考えられる高尿酸血症に注目し,その患者背景と尿酸値との関係,さらにPZA投与による尿酸値の変動,また高尿酸血症出現時の尿酸コントロール薬使用および痛風・関節痛症状の有無など多施設共同によるレトロスペクティブな疫学調査を実施した。〔方法〕2006年1月から2006年12月までの期間に肺結核として入院し,短期強化療法にPZAを投与した国立病院機構4施設226例を対象に検討を行った。〔結果と考察〕男172例,女54例,平均年齢59.5歳。平均BMI19.8kg/m2。PZA投与前の血清尿酸値は平均4.73±1.78mg/dl,PZA投与後の血清尿酸最高値の平均は10,63±2.67mg/dlとなり両者にはp<0.0001と統計学的有意差が認められた。またPZA投与による8mg/dl以上の高尿酸血症は845%に見られたが関節痛は4.42%の出現であった。さらに投与中断または中止例は51例(22.57%)に見られたが,その理由はIsoniazid(INH),Rifampicin(RFP)が原因として起こる可能性が高い肝機能障害と発疹であり,尿酸値上昇によるPZA中断例は見られなかった。また,高尿酸血症に対する尿酸コントロール薬の使用例は21例(9.29%)であった。〔結論〕短期強化療法においてPZAの投与は重要であり,その副作用として特有な高尿酸血症は出現しても経過観察は可能であり投与中断には至らないことが分かった。

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© 日本結核病学会
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