神戸英語教育学会紀要
Online ISSN : 2434-8929
Print ISSN : 0911-5617
大学生への多読を通しての統合型リーディングとライティング活動
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 1 巻 36 号 p. 21-37

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抄録

大学 3 年生で初めて英語のライティングを学んだ学生の、新聞記事(NA)と多読教材(ER)の 二つの題材での英語のライティングを検証した。学生は学期内12回の授業でOxford graded reader level 3 の 1 冊を読み終え、NA の 4 つのコメントを提出した。fluency (文法上の 間違いが少なく、語数が伸びる) を二つの題材で比較したところ、文法上の間違いは ER の 方が NA の 2 倍の間違いがあった。特に 3 人称単数形や代名詞の間違いが多かった。これ は ER の登場人物や出来事に対するコメントを描写する際の間違いであった。文法上の間違 いはライティングの回数を重ねても減少しなかった。一方、語数は NA に対するコメントの 方が語数が伸びた。Text の要約や写しの多い冗長な内容にとどまっているライティングは 一文、一文の関連性がなく、またパラグラフとしても統一感がない状況にとどまっている反 面、現代社会の問題や傾向などの記事に表れる語彙をパラフレーズし、transition words を 上手く使いパラグラフ構造を使って書いた学生のライティングは自分の意見を十分に表現 できていた。 Evaluation-free writing は学生がコミュニケーションとして意見を述べる手段としての機 能を果たしたが、文法の間違いのため、語数が伸びず学生の本意が伝わらない部分もあった。 リーディング及びライティングには critical thinking skills (CTS) が深く関わっていて、 analyzing, applying, creating などの CTS は個人差が大きく反映された。文法的間違いを減 らしライティングの質を高めるための方策として、英英で理解する語彙力、訳読ではない読 解力を基礎として CTS を養成、教育することがライティングの quality を高めることに 関 係があることがこの研究から推察できた。日本の学生には特に CTS の養成と教育が必須で あることがリーディングとライティングの能力から検証できたことは意義深いと思える。

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