2019 年 54 巻 1 号 p. 14-18
遷移金属酸化物を構成要素とするヘテロ構造は,完全結晶には見られない特異な機能を発現することから大きな注目を集めている.ペロブスカイト構造酸化物ABO3薄膜においては,金属原子を中心とする酸素八面体構造がマクロな機能特性を決定づけるため,機能発現メカニズムを理解するにはこの酸素八面体構造の詳細な解析が必要となる.しかし,八面体を構成する酸素原子は弱い電子散乱能のため,直接観察することは難しかった.本研究では,最新の球面収差補正器を搭載した原子分解能走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて,高角度環状暗視野(HAADF)法と軽元素可視化に特化した環状明視野(ABF)法に高速走査画像積算法を応用することで,酸素原子を含む全ての構成原子の位置を高精度で検出することに成功した.これにより,ヘテロ界面という局所領域における酸素八面体結合を直接観測し,界面直上における酸素原子変位が薄膜構造と強い相関を持つことを明らかにした.