日本健康教育学会誌
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総説
セーフティプロモーション:ヘルスプロモーションとの共通点,相違点
衞藤 隆
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2010 年 18 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

カナダとスウェーデンにある2つのセーフティ(safety)と傷害(injury)の予防にかかわる世界保健機関(WHO)協同センターの協議によりセーフティを以下のように定義している.「セーフティとは,身体的傷害や心理的危害,また物質的危害などにつながるような様々な危険や状態が,個人や地域社会が健康でよい状態であることが保たれるように統制された状態である.それは,個人や地域社会が個々の願望を達成する上で必要な日々の生活に不可欠の資源である.」また,セーフティプロモーション(safety promotion)の概念については,以下のように説明されている.すなわち「セーフティプロモーションとは,安全の最適レベルに到達して,それを維持するのに必要な状態が存在し,しかもその状態を継続させることを確かにすることを目指した過程である」.
セーフティプロモーション,ヘルスプロモーションは,いずれもおよそ1980年代にヨーロッパから提唱されて来た概念であり,それぞれ事故(傷害)予防,疾病予防からより包括的な概念に発展してきた.目標設定がセーフティプロモーションとヘルスプロモーションでは異なるものの,組織横断的な取り組みを重視することや,個人だけでなく環境や社会の関与や支援の必要性を説いている共通点がある.生活レベルに即して人々が理解し,実践出来るようにすることが大切である.セーフティプロモーションについては,地域における実践としてセーフコミュニティが提唱され,世界的に拡大している.

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