日本健康教育学会誌
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総説
セーフティプロモーション及びセーフコミュニティから見た職場の安全の位置づけと課題
武藤 孝司
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2010 年 18 巻 3 号 p. 209-218

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抄録

職場の安全がセーフティプロモーションに関わる議論の中で出てくることは少ない.そこで,本稿ではセーフティプロモーションにおける職場の安全の位置付けとそこでのあり方について検討した.1998年に発表されたケベック文書では企業もセーフティプロモーションに関わることが明示されている.セーフコミュニティの定義でも,その活動のどの領域においても職場における活動が期待されている.わが国では毎年10万人以上の労働者が労働災害に被災している.労働災害発生数は事業場規模が小さくなるほど多くなっており,約7割が従業員50人未満の小規模事業場で発生している.セーフコミュニティにおける安全な職場の指標は,職場の安全衛生管理体制が整備されていれば,ほとんど満たされている.しかし,事業場全体の97%を占める小規模事業場では労働安全衛生法に規定されている安全管理者の任命や安全委員会の設置は義務化されておらず,自営業には適用されない.従って,小規模事業場や自営業における労働安全衛生対策の推進が重要な課題となってくる.小規模事業場や自営業は大企業に比べて地域とのつながりが強いという特徴がある.今後は安全担当者が職場の安全対策をセーフコミュニティの枠組みで捉えることと共に,セーフコミュニティを推進する立場の者も職場の安全を意識した活動をすることが求められる.

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