日本健康教育学会誌
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総説
児童・生徒の傷害防止のための包括的な安全対策とセーフティプロモーション
西岡 伸紀
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2010 年 18 巻 3 号 p. 219-229

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抄録

本報では,子どもの傷害について,海外および日本の実態と防止対策,及び日本の学校に関わる安全対策である学校安全について述べる.
WHO(2008年)によれば,傷害と暴力は10-19歳の死因の1位を占めている.国内においても不慮の事故は1-14歳の死因の1位である(2008年).世界,国内とも,傷害は,交通事故,溺死・溺水,窒息,火傷,転倒・転落等により発生している.
一方,学校管理下の傷害については,年間の負傷発生率は,小学生及び高校生では約7%,中学生では約12%であり,死亡も年間数10件発生している.また,学校管理下の傷害は,上記と同様,多様な事故等により発生している.それらに対する対策として,学校は,事前・発生時・事後の段階に応じて,物理的・社会的環境整備のための安全管理,及び子どもに対する安全教育を実施している.その際,安全管理は学校保健安全法を踏まえて,安全教育は学習指導要領を踏まえて行われる.また,学校管理下のある程度以上の負傷に対しては,災害共済給付が支給される.具体策としては,学校は,安全教育,安全管理について,具体的活動を月別に立案し,実施する.さらに,事故等発生時には,学校は,各校の危険等発生時対処要領に従って対処する.
学校安全の課題は様々あるが,WHO推奨の傷害防止対策やセーフスクールの指標を参考にすると,傷害防止のためのデータや統計の改善,理論に基づく対策プログラムの開発,対策プログラムのプロセス及び結果の評価,具体策の拡大などが挙げられる.

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