日本健康教育学会誌
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実践報告
消費期限切れ食品の回収作業を通した食中毒予防活動
宮城県石巻市内の避難所における災害支援ナースによる一考察
中川 武子水本 トシ子宮本 ひでみ
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2011 年 19 巻 3 号 p. 229-238

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抄録

2011年3月11日の東日本大震災発生後3週間目に,石巻市内の避難所において災害支援ナースとして支援活動にあたり,食中毒予防のために避難所の被災者に配給された消費期限切れの食品回収作業を実施した.
約360人が生活している避難所では,咳嗽,嘔吐,下痢などを訴える人が多く,感染症も増えつつあった.被災者の中には消費期限切れの食品を保持している人がいた.それは「食品を捨てるのはもったいない」という気持ちと「食料が確実に配給される補償がない」という不安があったためであった.感染症予防の必要性を認識した担当者は,被災者の気持ちに配慮し,消費期限切れの食品を差し出しやすい環境を整えた.A4サイズの小さな箱を準備し,「私達がお預かりします」と声をかけ,消費期限切れ食品を回収した.
その結果,消費期限切れの食品の量は,約50cm四方の段ボール箱5~6個分になった.回収した食品の内容は,家庭で作ったおにぎり,消費期限が1週間以上過ぎたおにぎり,菓子パン,食パンなどであった.特に食パンが多かった.
緊急時においては,被災者が自分自身で食料を選択する環境が整っていない.そのような状況においては,被災者を食中毒から守るため,医療従事者の支援が必要である.

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