日本健康教育学会誌
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特別報告
身体活動・座位行動のポピュレーション戦略の実践例
涌井 佐和子
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2016 年 24 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

目的:特定健診・特定保健指導制度下での身体活動不足や座位行動(座りすぎ)対策の課題や今後期待されるポピュレーション戦略についてレビューし,且つ,これらの実践例を示すこと.
内容:特定健診・特定保健指導は,メタボリックシンドロームの予防・解消を目的としたハイリスク対策の制度である.しかしながら,次に示す3点の課題がある.1)身体活動不足であることが,喫煙習慣と比較して重視されていない.2)これまでに座位行動(座りすぎ)の評価や座位行動を減らす介入は実施されていない.3)身体活動不足である人々の多くは特定健診を受診しておらず,しかも専門家による身体活動介入の恩恵も受けていない.この制度の対象は40歳~74歳の全ての被保険者とその扶養者であり,ポピュレーション戦略の機会になり得る.「健康づくりのための身体活動基準2013」では,社会環境整備や社会的支援の増加などを含む,ポピュレーション戦略が強調されている.しかし,理論的な枠組みについてはあまり示されていない.これまでにその実践例は,いくつかの理論やモデル(例:コミュニティ組織論,普及理論,メディア効果論やソーシャル・マーケティング,エコロジカルモデル)に基づくものであり,身体活動の促進や,座位行動の低減に適用されてきている.
結論:特定健診・保健指導の制度において,理論あるいはモデルに基づいたポピュレーション戦略の視点を持つことが期待される.

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