日本健康教育学会誌
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特別報告
川崎市における健康管理支援の取り組み
―生活保護受給者への生活習慣病重症化予防対策―
高橋 真奈美
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2016 年 24 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

目的:川崎市では生活保護受給者と生活困窮者を含めた方策について全庁的に検討し,「川崎市生活保護・自立支援対策方針」を策定した.6つの基本施策の1つとして「健康づくり支援」を位置づけ,平成25年度からは市内福祉事務所の生活保護担当部署に正規職員保健師を1名配置した.こうして始まった被保護者の健康管理支援の取り組みについて報告する.
活動の実際:取り組み課題は「高齢者世帯の増加に伴う医療扶助費の増大」と「経済格差を背景とした健康格差」である.そして,ケースワーカーの訪問頻度が少ないケースを中心とした高齢者の健康支援と生活習慣病の重症化予防を重点項目とした.具体的な活動として,①個別支援,②生活習慣病予防対策(糖尿病対策),③健康診査の受診率向上,④医療扶助費の適正化を行っている.これらの活動は本庁保健師,市内9福祉事務所の保健師,ケースワーカー,関係職員が協力し,試行錯誤しながら健康管理支援を実施している.
まとめ:生活保護の現場では,保健師を含む関係者が予防的介入や健康の視点を基盤に,住民の自立助長を図っていく必要がある.国からも健康管理支援についての課題や方向性,評価指標が示されている.川崎市でのこの取り組みによる効果測定は,今年度の課題である.また,被保護者が生活保護廃止となった後も,継続して健康管理に関する支援を受けられる仕組みや地域づくりを関係部署・関係機関と共に検討していくことも課題である.

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