日本健康教育学会誌
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特別報告
豊かで活力のある長寿社会づくりに貢献する健康づくりとは!
荒尾 孝
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2017 年 25 巻 3 号 p. 204-209

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抄録

今後日本においては,「豊かで活力ある長寿社会」を実現するために,安心で安全な国民の生活を保障する「社会保障の健全運営」を可能とすることが求められる.そのためにはヘルスプロモーションに基づく健康づくりの成果を蓄積することが重要となる.特に,新たな健康課題である「健康格差」を解消するためには,従来のハイリスク型の健康づくりではなく,全ての人々を対象とした集団戦略型の健康づくりを実践すべきである.そのような健康づくりでは,全住民や疾病リスクを持つ可能性が高いと思われる「社会的特徴」を持つ集団を対象とし,マスメディアを用いた情報提供,個人や集団を対象とした健康教育,および住民や住民組織のエンパワーメントを通じた地域力向上による環境整備など,多領域にわたる包括的な介入アプローチがなされる.こうした健康づくりの集団アプローチにおける戦略構築と戦略実践に関するモデルはすでに提唱されている.健康づくりの社会的成果をあげるためには,健康づくりに関する研究成果の「蓄積」,「伝える」,「使う」といった情報の活用プロセスにおける問題点の解決と,学際的で多領域的な研究を可能とする研究環境の整備が必要である.特に,後者については,ヘルスプロモーションに関連する多くの学術団体が連携・協力して新たな学術組織として「日本ヘルスプロモーション学術連合(仮称)」を設立することが望まれる.

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© 2017 日本健康教育学会
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