日本健康教育学会誌
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実践報告
市販薬の使用における副作用の「罹患性」の自覚を高める保健の授業
佐見 由紀子植田 誠治
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2017 年 25 巻 4 号 p. 269-279

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抄録

目的:中学校で取り上げる市販薬の使用における副作用の「罹患性」の自覚を高める教材を用いた保健の授業を行い,その効果を検討することを目的とした.

方法:平成26年6月の同日に,都内国立大学附属A中学校3年生4クラス160名を対象に,準実験計画研究デザインに基づきクラス単位で割付した.2クラス80名には,副作用の「罹患性」の自覚に焦点を当てた事例教材を用いた授業を実施し,別の2クラス80名には,自然治癒力に焦点を当てた教材を用いた授業を実施した.授業の1週間前と1週間後,3ヵ月後に無記名自記式の質問紙調査から,副作用の「罹患性」の自覚,副作用への意識,副作用予防の自己効力感を得点化し,その変化を分析した.なお,学習保障として,全てのクラスに対して,3ヵ月後の調査が終了した後に,授業で取り上げなかった教材についてのプリントを配布し,授業者が補足説明を行った.

結果:副作用の「罹患性」の自覚に焦点を当てた授業では,副作用の「罹患性」の自覚の3項目全て(p<0.001),副作用への意識の3項目全て(p<0.001),副作用予防の自己効力感では,2項目全て(「薬剤師に質問することができる」:p=0.003,「説明書を読むことができる」:p<0.001)において有意な差が認められた.また,授業の1週間前に比して1週間後の得点の中央値が高くなった.ただし,副作用予防の自己効力感は,3ヵ月後には授業前に戻っていた.一方,自然治癒力に焦点を当てた授業では,副作用の「罹患性」の自覚に変化はなかった.副作用への意識と副作用予防の自己効力感では,有意な差が認められ,授業の1週間前に比して1週間後に得点の中央値が低くなった.

結論:「罹患性」の自覚に焦点を当てた事例教材を用いた授業では,副作用の「罹患性」の自覚だけでなく,副作用への意識に望ましい変化がみられた.副作用予防の自己効力感の変化の持続については,今後の検討課題である.

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