日本健康教育学会誌
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特別報告
健康づくりによる社会的成果
―健康日本21(第二次)の戦略と展望―
辻 一郎
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2017 年 25 巻 4 号 p. 280-286

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抄録

目的:健康寿命の延伸と社会環境の整備について背景を説明するとともに,生活習慣の改善や健康づくりが医療費・介護費に及ぼす影響を定量的に示し,さらに健康増進・疾病予防の新しい戦略を提示すること.

内容:健康日本21(第二次)が目標とする「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は,現時点では達成されており,今後の動向が注目される.「健康を支え,守るための社会環境の整備」という目標について,喫煙率の年次推移と歩行数の都道府県比較を例に,人々の生活習慣は社会環境により大きく影響されることを示し,社会環境を整備する戦略を論じた.著者らのコホート研究をもとに,医療費の12.8%が喫煙・肥満・運動不足という基本的な生活習慣リスクによることを示し,健康増進・疾病予防の医療費・介護費に及ぼす影響について考察した.最後に,「個人」に対する介入から「社会・コミュニティ」に対する介入へと,公衆衛生のパラダイムが大きく変わろうとしていることの例として,欧米における減塩対策と水道水へのフッ化物添加について,その取組みと効果を紹介した.

結論:健康増進・疾病予防は,国民の生活の質の改善,社会保障財政の安定化,社会経済的活力の向上という3つの成果を同時に果たすことのできる唯一の手段であり,人口減少高齢化が進むなかで健康増進・疾病予防に対する期待がこれまで以上に増している.

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© 2017 日本健康教育学会
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