COVID-19への対策は予防が主眼となっている.COVID-19パンデミック環境下における問題と対策を,ストレス,行動変容,スティグマの3つの観点から疾病予防とは異なる立脚点である健康生成論の立場で整理・解釈し健康生成論的な対策の必要性を明らかにすることを本稿の目的とした.COVID-19に関連するストレス対策に関しては,健康生成論の背景理論の一つがストレス理論であること,および健康生成論の中核概念であるsense of coherence(SOC)のストレス対処力としての機能に着眼した実証研究もあり,特にSOCが低い対象への対策を健康生成論的に推進する必要がある.マスク着用や咳エチケット,空間的距離の確保に関する行動変容は,疾病の原因を探る対策というより,新たな社会生活への適応を求めた健康生成論的な対応ととらえることができる.COVID-19スティグマの問題は精神疾患患者に対するスティグマ対策に学ぶ必要がある.つまり患者自身のセルフスティグマに対してはSOCが関与すること,パブリックスティグマに対してはヘルスリテラシーが関与することが明らかになっており,プログラム評価が進んでいる.COVID-19に対しても同様の健康生成論的な対策が期待される.以上から,今後のCOVID-19パンデミック環境下における課題においては,健康生成論的アプローチは有効である可能性が高いと結論できる.