日本健康教育学会誌
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コホート研究による高齢者の喫煙が生命予後に及ぼす影響
巴山 玉蓮岡戸 順一艾 斌櫻井 尚子星 旦二
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2003 年 11 巻 2 号 p. 43-50

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抄録

目的: 本研究の目的は, 高齢者の喫煙習慣が生命予後に及ぼす影響を検討し, 高齢者のQOLや健康学習を考える際の基礎資料とすることである.
方法: 本研究は, 1998年に実施した健康感, 生活習慣, IADLや社会ネットワークなどに関する自記式アンケートによる基礎調査と, その2年後に実施した追跡調査の結果を分析したものである.基礎調査対象は, アンケート調査に同意の上回答が得られた全国11市町村に居住する, 入院や施設入所者を除く60歳以上の住民21, 716人 (回収率79.0%) である.そのうち調査票の記載不備の者を除外した19, 636人をコホート集団とした.2年間に447人の死亡 (男性251人, 女性196人) が確認された.生命予後の説明変数は喫煙とし, 総死亡との関連を喫煙のカテゴリー別にX2検定にて比較した.さらに, Cox比例ハザードモデルを用い喫煙と総死亡の関連を分析した.
結果: 喫煙習慣の死亡への影響について, カテゴリー別の生存者と死亡者の出現頻度を検討した結果, 男女ともに有意であった.しかし, 総死亡への影響をみると, 男性では「以前から吸わない」群に比べ, 「吸っている」群, 「吸うのを止めた」群ともに有意な差は認められず, 生命予後との関連は見いだせなかった.有意差は認められなかったものの「以前から吸わない」群に比べ, 「吸うのを止めた」群のハザード比1.14 (0.83-1.58) がやや高い傾向が見受けられた.女性では, 総死亡に対して「吸っている」群が2.10 (1.27-3.45) , 「吸うのを止めた」群が3.57 (2.18-5.86) と統計上有意に高いハザード比を認めた.
結論: 喫煙習慣の3カテゴリーと生命予後の関連を検討した結果, 喫煙習慣は男性の生命予後には影響を与えていなかったが, 女性の生命予後には影響していることが示唆された.

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