日本健康教育学会誌
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栄養教育へのジェンダー視点導入の有効性
―パナマ共和国ノベ族農村女性の事例―
石川 みどり足立 己幸
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2003 年 11 巻 2 号 p. 51-66

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抄録

目的: 栄養問題を改善するために, ジェンダー視点を導入した栄養教育が参加者自身の課題への気づきを促進し, 課題の実行へ移行するプロセスを把握する評価枠組みを開発し, その有効性を介入により検討する.
方法: 1) 評価枠組み (仮説) の設定: ジェンダー視点を導入した活動の評価指標としてThe Reversed Realities Frameworkを基礎として評価枠組みを作成した.評価枠組みの項目について対象住民への妥当性を確認した後, 食態度・行動の変化 (ステージ) と共有行動の広がり (広がり) の2側面からなる仮説を設定した.
2) 栄養教育プログラム: 学習目標を栄養問題改善のために自分の課題に気づくこととした.対象は集落全39世帯の女性とし, 民芸品づくり共同作業場と自宅での学習を交互に繰り返し, 計8回実施した.自宅学習中に家族, 地域の人との課題の共有を促進する要素を取り入れた.
3) 評価: 共同作業場での学習に参加した女性41名を解析対象とした.介入前後で学習目標への達成度の評価と枠組み仮説を用いた評価を行った.
結果: 1) 学習目標への達成度の評価: 参加者87.8%に栄養問題改善のための課題への気づきがみられた.
2) 評価枠組み (仮説) による評価: (1) 参加者の87.8%に食態度・行動の変化が, 100%に共有行動の広がりがみられた.そこでステージおよび広がりを得点化し系時的変化をみた結果, 得点は有意に増加し, 両者の変化量が相関した. (2) パス解析モデルを作成しパスダイアグラムを求めた結果, 食態度・行動の変化と共有行動の広がりの相互関係が確認された.
結論: 以上により, ジェンダー視点を導入した栄養教育が参加者の栄養問題改善のための課題への気づきを促進することが確認された.また, 評価枠組みにより課題の実行には家族・地域の人との課題の共有が重要であることが明らかになった.

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