日本健康教育学会誌
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顔の異形が当事者にもたらす心理社会的影響に関する文献的考察
近藤 佳代子遠藤 雄一郎藤田 政博
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2005 年 13 巻 1 号 p. 46-53

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抄録

本研究の目的は, 疾患や外傷により顔に生じた異形が当事者にもたらす心理社会的影響を文献的に検討し, 研究の到達点と将来的な研究課題を論考することである.文献は“facial disfigurement”を検索式としてOvid MEDLINEとWeb of Scienceで収集した.文献は, 生物心理社会モデルに基づき, 身体, 心理, 社会の3領域に整理した.身体的領域では, 近年の動向として, 疾患別ではなく「顔の異形」を対象とした研究へ移行があった.また, 異形が現われた時の年齢や異形が現われてからの年数, 疾患の重症度は, 心理的な影響を必ずしも予測しなかった.異形の影響を発達段階ごとに検討する必要性も示唆された.心理的領域では, 心理的ウェルビーイングの低下は, これを主題とした多くの研究で支持された.従って, 今後は当事者の心理的健康を促進するための介入や支援の拡充が必要と考えられた.社会的領域では, 様々なスティグマを被る状況に曝されており, 心理的健康の低下と関連があったが, 患者-医師関係の検討と, スティグマを緩和するための施策の不足が課題だった.対処戦略は, 異形への適応に阻害的な対処として回避や隠蔽が注目されていた.ソーシャルサポートは心理社会的適応の予測因子であるが, 詳細な検討を欠いた.特に, 今後はライフサイクルを視野に入れた家族関係とサポートの分析が望まれた.

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