日本健康教育学会誌
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修正版Perceived Health Competence Scale (PHCS) 日本語版と社会経済的地位との関連性の検討
戸ヶ里 泰典山崎 喜比古小出 昭太郎宮田 あやこ
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2006 年 14 巻 2 号 p. 82-95

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抄録

ヘルスプロモーションを主眼とした健康関連習慣あるいは健康関連行動の変容に関与するプログラムにおける能力評価指標として自己効力理論を基盤に作成された主観的健康管理能力尺度 (Perceived Health Competence Scale; PHCS) が注目されている.本研究では修正版PHCS日本語版を使用し, PHCSと社会経済的地位との関連性の検討を行うことを目的とする.日本国民全体より層化二段抽出した男女3, 000名に対し, 構造化面接法を行ない1, 910名より回答を得た (回収率63.7%) .これらのうちPHCSに回答している1, 781名 (有効回答率59.4%) を分析対象とした.社会経済的地位として, 両親および本人の教育歴, 本人の職業, 収入について測定した.男女別の, PHCSスコア分布, 及びPHCSを目的変数とし, 社会経済的地位を説明変数とした重回帰分析の結果, 以下の諸点が明らかとなった.すなわち, 男性において高いPHCSスコアには, 本人の教育歴が高いこと, 定年退職者, ホワイトカラーであることが関連する点, 一方でPHCSスコアと収入の間には関連が見られなかった点, 女性では高いPHCSスコアには母親の教育歴が高いこと, 専門職や自営業であること, 低収入ではないことが関連する点である.こういった社会経済的な格差については今後更なる縦断的デザインでの検討が望まれる.一方で, 決定係数は10%未満にとどまることからもPHCは後天的に形成される可能性があり, PHCの維持あるいは増進に関するメカニズムおよび介入プログラムの開発に関する検討も望まれる.

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