日本健康教育学会誌
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日本語版Action Control Scale (ACS90) の再テスト信頼性と内的妥当性の検討
佐久間 夕美子佐藤 千史
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2008 年 16 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

活動指向性とは感情を効率よく自己制御し, 意図的に行動しやすい傾向である.一方, 状態指向性とは感情制御が困難であり, 意図に行動が伴わない傾向をもつとされる.本研究の目的は, 活動を統制する個人の特性 (活動指向性/状態指向性) の測定尺度として開発されたAction Control Scale (ACS90) の日本語版の再テスト信頼性と内的妥当性を検討することである.日本語版ACS90には先行研究が少なく, 日本語版と原版で下位尺度に相違があるなどいくつかの問題点がある.また, 日本語版ACS90作成後10年が経過しており, 対象者が社会情勢の変化によって影響されたことも考えられた.このことから本研究では日本語版ACS90の追試研究を行った.
調査は2004年7月, 4年制大学の男女学生339名に実施した.因子分析の結果, 先行研究と同様に3因子が抽出され, 高い信頼性と内的妥当性が示された.しかし, 因子負荷量の低い1項目と, ACS90原版の開発者の設定とは別の因子に高い負荷量を示す1項目が抽出された.これらは概ね先行研究と合致していたが, いくつかの項目についてACS90原版の開発者と日本語版ACS90の作成者で判定が異なっており, 下位尺度項目については今後も検討が必要である.
健康教育による行動変容には意図的な感情のコントロールが不可欠である.対象者の特性を考慮した健康教育は, より効率的で適切な健康行動を引き出す可能性があり, 今後はこの尺度と具体的な健康行動との関連についてさらに検討してゆく必要がある.

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